いつもあの音が
『凪のあすから』Vol.8 特典ドラマCD
歌手:茅野愛衣
专辑:《『凪のあすから』Vol.8 特典ドラマCD》

あの日、三年前のお舟引きの日
イヤ...イヤ...イヤ...イヤヤヤヤヤ......
耳の奥にこびり着いてしまった、あの日の音色 
ざあざあ...ざあざあ...と、私を責める、波の音
いまは、もうどこにもない、波の音
ね、どうする?
市役所の前のもんじゃ焼き、寄って帰ろうか?
あれ、あそこ先週潰れてたって聞いたよ
ええ、そうなの…ヤバい
波七海ヤバい、
どこも潰れまくりじゃん
鴛大師と比べたら七海はずっといいよ
まだ都会だし、お店もあるし、ね、千咲
うん…
どうした?
あっ,ごめん,わたし今日は…
夜ご飯の支度あるから,先に帰るね
いつもそうやって付き合い悪いだから
今日は帰る禁止だからね
もう、優ちゃん、なにそれ
よーす 、レディースよーす
あっ、狭山、ね、木原君にちゃんと確認を取って合ってくれた?うん。
確認って? 
はい、千咲へ紡から伝言「今夜自分が晩飯作るから、羽伸ばしてこい」とさぁ
えぇっ、ちょっと待って、そうな勝手に…
いいじゃん!いつも家のことばかりに終われってさぁ、偶にはパーと遊ぼよ
でも…あ、狭山も一緒にいかない?
えっ、俺も..うん..どうすんか…
ああ、信号、赤になちゃた
とりあえず、どこ行くか決めよう
どうする、ブラウニーファミレス
千咲?
わたしやっぱり帰る、ごめんね!
うぇ..ちょっと、千咲、ああ、いちゃた
じゃあ俺もやっぱ帰るは
家の手伝い役から
清木がかりすんなよ
次遊んでやるからさぁ、じゃな
なに偉そう、別にアンタとなんか頼まれたて遊びたくないっつーの
そんなことない、頼まれなくでも遊びたい
え、そうなの
え、あや、噓、まさか安達狭山のこと…
そ、そうだったんだ、ごめん、気付かなかった
いいよ、なんか、言いづらかったし
どうして、言ってよ、友達じゃん
うん…でも、鴛大師からうちの高校来た子たちさぁ
みんな仲良くてさぁ、張り込めないっていうか、羨ましいなんてと思って
そんな、特に仲良くないよ、男子とかは特にそうだし
千咲とちゃんと仲良くなったのだって中三になってからだもん
ああ、どうしたの?
うん、なんか前にね、私も似たようなこと思ったことあったなぁんて
おまえ、学校で紡避けての?
え、そのことないけど
だって、行きも帰りも別じゃん
同じ家から来るのにわざわざ面倒だも
でも、変の噂されるも面倒だし
一緒に暮らしてることが?今さらなんの感応言う奴なんてもいねえって
いたとしても、俺ががつと交わしてやるしよう
いいよう、本当、特に話すことないもん
なんだそりゃ、倦怠期の夫婦みてえ
そうじゃなくて、別に学校じゃなくても、家で話せばいいだけだし
うんん、あ、そういやおまえ、進路調査表出した?
もう、急に話変わるだから、まだだよ、狭山君は?
どうせ俺は店を継ぐからさあ、それまでちょっと遊ばせてもらうと思ってだけど、
親父近ごろ腰悪いし、まいっかって
狭山君って、意外と大人だよね
なに、俺の意外の魅力にドキとした?
するわけないでしょう
電車がトンネルに入ると、一瞬目を閉じてしまう癖がついた
耳をじっと澄ます,トンネルの先に見えるのもの、
それに動揺しない、心の準備をする
トンネルを向けると、そこに広がるのは
鴛大師、鴛大師です

時を止めった、凪いだ海

ただいま!
なんだ、早いな
もう、紡、料理当番は私なんだから
偶には変わるよ
いいの、私がやるから、ほら、どいて、取り敢えず着替えてきて
信用ないな、俺もそれなりにはできるけど、料理
分かってます、分かってるけど、でも、いいから私にやらせる
千咲…
賞味期限ぎりぎりの食材とか、明日の献立で使えたいものとか、いろいろあるだから
紡に料理されると、予定が全部繰るちゃうの、ほら
そうか、じゃあ俺、爺さん手伝ってくる
うん、直ぐ出来るから
強引すぎたかな
お味噌汁はもうできてるんだ、ちょっと味に
悔しいな、おいしい
そう、紡を作るお味噌汁はわたしのよりずっとおいしい
小さい頃から、ずっとお爺ちゃんの手伝いをしてだから
嫌になちゃうな、自分のこと
私なんて、家にいるときは何もできなかった
洗濯や掃除を手伝いくらいで、家事はお母さんに頼りっぱなしだった
はい、ご飯お待たせ
あ、美味しそう!
母さんのあらの煮付けは最高だからな
うん、私も大好き
だったら教えてあげようか、作り方
あらの煮付けの?
そう、千咲女の子なんだしね、少しは料理覚えたほうがいいはよ
将来のお嫁さんになった時
ええ、お嫁さん、考えられないよ
そうだ千咲の言う通り、まだ当分そうなものは覚えなくでいい
いや、ずっと覚えなくでいい
もう、お父さんは
どうして、もっとちゃんとお手伝いして来なかっただろう
何気ない日々がこんなにも大切なものだったなんて
あの頃は気づかなくで
嫌だ、お玉落としちゃった、ダメだなあもう
えっと、お味噌汁があるから、後はお魚を用意いて
ほうれん草ごま汚しに
また、あの波の音
いただきます
うん、やっぱお味噌汁おいしい
魚もうまいよ
それは魚自体がおいしいから
カラメルは良い按配にあけてる
ありがとう
千咲
うん?おかわり?
進路調査表、もう書いたが?
進路か、そうか、そうな時期が
紡ぐ、そうな話今しなくでも
おまえ、卒業したらどうする
私は、その、昇職するから
昇職、進学はしないのか?
うん、私ないから、将来なりたいものとか、やりたいこととか、特に…だから
余計なことは気にしなくていい
努めたいところがあるならそれでいいか
うん…

紡、いい?あぁ
勉強してた?
あぁ、どうした?
進路調査表のこと、何でおじいちゃんの前で言うの?
いつか言うはなきゃならないだし
それに、じいさんの前に言うはなきゃ勝手に決めてだろう
中学の卒業文章、お前書いてたよな、将来の夢看護師になりたいって
あれは違う、空欄で出すにはいけないし、なんか書かないといけないから、取り敢えず…
何もやりたいことないなら、なおさら進学した方がいいじゃないのか
でも、お舟引きの日から、魚も思うように取れなくなって、生活だって大変なのに
言ってだろう、爺さん、余計な心配はするなって、俺だって大学行かせてもらうだし
紡と私は違うよ、だって他人の私がそこまでしてもらうことなんて出来ないよ
他人か、あのさぁ、約束してくれ、爺さんの前でそれ言うはないでくれ
悪かったよ、相談もなしに進路のこと勝手に切り出して、話はそれだけ?
うんん…それだけ
じゃあ、おやすみ
おやすみなさい…
紡、怒った目、してた…
これで洗い物全部かな
おじいちゃんも、紡も、私のこと大切にしてくれて、私のこと考えてくれて
なのにわたしは
気づくと、響いてくる波の音、後悔に包まれた時に必ず聞こえてくる
耳の奥にこびり着いた音、そして私はあの日に帰る
要の気持ちを、気づつけてしまったまま、愛花の純粋さに引け目を感じたまま
光に対して勝手の思いをぶつけてしまったまま
あの日から海は凪いだ
波の立たない海、音のしない海
なのに記憶の中の波の音は、今も私を責め続ける
止めどなく押し寄せる後悔の波が、ざあざあ…ざあざあ…ざあざあ…
おはよう
おはよう、紡今朝はもう学校行くの?
あ、日直だから
じゃあ私が一歩後のバスで行く
そっかぁ、千咲、偶には一緒に行かないか?
え?
否、いい

おじいちゃん、お疲れ様
お茶を忘れていたでしょう、台所に水筒を置いてだから持って来たの
悪いな
どうしたの、顔色悪いみたい
そうか?
おじいちゃん、今日はもう家に帰ってゆっくりしてた方がいいよう
千咲、昨夜の話だが
それはまた後で、そろそろバス来るから、じゃあ行ってきます

安達さん今日休みだったね
昨日は元気だったのに
どうしちゃったのかな
あ、そうか、安達千咲には電話してないか
そうだよね、木原君と一緒の家だもんね
えっ、何があったの?
安達さあ、狭山に告白したんだって、昨日の夜電話で
シー、声大きい
でも振られちゃったみたいでさあ、狭山と顔合わせたくないから休むかもって
だから多分今日それ
あ、そうなんだ、そうか
安達かわいいのになあ、狭山のくせに何偉そうに…
お前こそ何様だよう、その言いぐさ
狭山、木原君?

ちょっと、何で盗み聞きするわけ?
昇降口で堂々と喋ってたら嫌でも聞こえるっつーの
しかも人の悪口大声でよ
だって、あんたいつも彼女欲しいってうるさかったじゃん
だったら付き合ってあげたっていいのに、けち
けちって、お前なん
ああ、もういい、行こう千咲
あ、優ちゃん待って
何だってだよう、女って面倒くせぇ
確かに言ってだなあ、誰でもいいから彼女欲しいって、お前
まぁ、言ってだけどよ、でも、告白ってやつさぁ、本気で付き合ってみたら気が変わっただよなぁ
なんか本気で好いてすれてのに、そうゆう半端な気持ちで付き合うなってさぁ
好きでもないのに、何っつか申し訳ないっつか悪いっつかさあ
そうか、なるほど
なんだよ、おまえだったらどうなの
いや、そもそも誰でもいいから付き合いたいなって思ったことないから
あぁ、はいはい、男前は言う事違うね
そうか、お前の方が男前だと思うけど
お前はどうしてと真顔で斜め上のことを言うだよう

言ってたんだ安達、浜中から来た子たちは仲が良くって
入り込めない気がするって
だから私たちにも、狭山が好きって言い出せなかったみたい
そうなん
でもその気持ち少し分かるような気がするだあ
私も伊佐木君 、ううん、千咲や汐鹿生の皆は浜中に来た時
あの中には入れないなって思ったから
私さあ、伊佐木君のこといいなあって思ってたんだ
そうだったんだ、優ちゃん
ああ、そうな、そこまで本気で訳じゃなかったんだけどさあ
伊佐木君人気なんだからなんとなく
でもさあ、あんなことになんちゃって
あ、ごめん、私変なこと言って
ううん、いいの
千咲の方が、私なんかより何倍も、
比べ物にならないぐらいづらいのに、本当ごめん
気にしないで、大丈夫だから
千咲
じゃあまた明日ね
うん、また明日
お舟引きの日の波の音が、こびりついたままなのは
わたしだけじゃないかもしれない
千咲ちゃん、ちょっとよっかたわ
叔母さん
これね、ジャガイモとか、アスパラとか、
農家の親戚がたくさん送って来たのよ
おじいさんに食べさせて上げて
すごい、ありがとうございます
あら、なに、アンタ元気ないじゃない
えぇ、そうですか
アンタも食べなさいね野菜
若い女の子はダイエットとか何とかすぐに言うけど、栄養付けないと
あ、はい
それじゃあ
ダメだなんこれじゃあ
おじいちゃんに心配かけじゃぁ

おじいちゃん、隣のおばあさんがこれ
おじいちゃん、嫌だ、しっかりして、どうしたの
おじいちゃん、おじいちゃん…
ご家族の方はここでお待ちください
いや、おじいちゃんを連れて行かないで
千咲、落ち着け
行かないで、私からもう誰も奪っていかないで
大丈夫だ、大丈夫だ

手術時間かかってるな
私どうしよう
朝気づいてたの、私、おじいちゃんが顔色悪かったの、気づいてたのに
千咲
どうしてあの時病院に行こうって、私
木原さん、ちょっといいですか
はい

お前はここで待ってろう
でも…
いいから
一人取り残された廊下で気配を感じた
また、あの音
後悔の波の音が聞こえてくる気配が
その時聞こえてきたのは
お舟引きの日のあの激しい波じゃなく
おじいちゃんの船の音
うちに来るといい
俺も海から来た
汐鹿生に戻れなくなった私を
おじいちゃんが家に迎えてくれて
紡も当たり前みたいに私を受け入れてくれて
凪いだ海は怖かったけれど
おじいちゃんの船がお漁行く、その間だけは、穏やかに感じられた
おじいちゃん、紡、ご飯できたよう
あの日から私はずっと大切な人たちと離れてしまった
後悔の中にいたと思ってた
でもその間に積み重ねてきたものがあったんだ
おじいちゃんと、紡との日々
おじいちゃん
波の音は後悔の音
でも、もし、もし今
おじいちゃんに何かあったら
そうしたら
今度はあの船のエンジン音も
後悔の音になってしまうのかもしれない
紡、紡、おじいちゃんは?
大丈夫だ、手術成功したって
千咲、どうした?立ってるか?
よっかた、よっかた
泣きすぎだぞ、お前
だって、だって
紡は涙する私の頭をそっと撫でてくれた
その手は、とても大きくて
指の節がごつごつしていて
日に焼けていて
紡の手、おじいちゃんの手に似てる
そうか
暖かくて、とても落ち着くて

あ、朝日が眩しい
あ、今日学校どうする?
うん、休むよう
お爺ちゃんの入院の準備しなくちゃ
パジャマとかタオルとか
そうだなぁ、俺も手伝う
私ね、もう後悔したくないだ
後悔?
んん、あの時、あしておけば良かったとか
こんなこと言うじゃなかったとか
汐鹿生のこと言ってるのか
汐鹿生の皆が戻ってくるって、信じてないのか
そうなん、信じてるよ
だったら、後悔も何もないだろう
取り返しのつかないことなんてまだ何もない
紡、そっか、そうだよね
高台の病院から見える海は
朝日に輝いて
お爺ちゃんの船が通っていなくでも
不思議と怖くなくて
私、お爺ちゃんが元気になったら、お願いしてみようと思う
看護士になりたいって
千咲
あああ、バイトとか奨学金とかいろいろ考えて
なるべく迷惑かけないように
いや、きっと爺さん、喜ぶと思うよ
他人なんかじゃないから
喜ぶよ
だといいな
絶対喜ぶ
これから先、私は何度あの波の音を聞くことになるだろう
分からないけれど、でも、それでも今は思う
この日の朝日を、忘れたくないって

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