蔷薇ノ木ニ蔷薇ノ花咲ク
小説“精霊流し”の世界
歌手:さだまさし
专辑:《小説“精霊流し”の世界》

庭と呼べない程の狭い土地に母が
花の種を播いた
借家暮らしの2年目の春
父の仕事はうまくゆかず
祖母も寝ついた頃で
祈るような母の思いが
やがて色とりどりに咲いた
学校の2階の廊下の窓から
見下ろすといつも洗濯をする母が見えた
弟と僕が手を振れば母は
小さな妹と笑顔で応えた
アマリリスの白い花
貧しかったはずだけれど
決して不幸などではなかった
あの日のあの青空
貸し本屋の帰り道
崖下の川のほとりに
ぽつりと咲くバラの花を
弟がみつけた
傷だらけでたどりつけば
待っていたかのように花は
根こそぎあっけなく母への土産となった
その花は根づいて
僕らの希望のように
毎年少しずつ紅い花を増やした
8つに増えた頃
愛する祖母を送り
僕は泣き続けて
生命を教わった
バラは十幾つになり
静かに風に揺れていた
どんなにつらい時もあきらめるなよと咲き続けた
そのあと父は町のはずれに
小さいけれども新しい家を建てた
引っ越しの日が来て
沢山の思い出を
残して僕らはトラックに乗り込んだ
庭中紅いバラの花
手を振るように風に揺れた
弟と僕と何度も振り返った あの青空
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