歌手:下野紘
专辑:《カレと床入りするCD 「黒吉原メランコリア」 第四夜 三井乙春》

ナナミ　戻りましたよ
どうしたんですか　なんだか不機嫌そうな顔ですね
外はこの雨ですし　気分が鬱々とするのも　頷けますけれど
あ　そうか　分かりました
こんな時間まで君をひとりにさせていたから　怒っているんでしょう
寂しかったですか　でも　もう大丈夫　今日の仕事は　すっかり片付きましたからね
これから夜が明けるまで　ずーっと一緒にいられます
そうだ　今日は君にお土産があるんでした
昼間見世物小屋にやって来た呉服屋の主人から　小売餅をいただきましたね　食べたことはありますか
その様子だと　どうやら初めてみたいですね
まあそれも無理はありません　君のいた黒吉原では　もっと高級のお菓子が出たのでしょうし
でもこれも　素朴な味がして　偶にはいいものですよ
黒吉原か　懐かしいですね　いろいろありましたが　気づけばずいぶん時間が経ってしまいました
そうだ　今夜は君のために　私が昔話でも聞かせてあげましょうか
かつて　黒吉原一度歌われた　それはそれは美しい花魁の話
そう　君自身のお話を　ね
そうと決まれば　まずはお茶でも入れてきましょう　餅ならばやっぱり煎茶がいいですね　すぐに戻りますよ


そこの君　ひとつお尋ねしたいのですが　ええ　君のことですよ
ああ　これは驚きましたね　なんで美し娘さんなんでしょう
さすが家族こようとした噂される黒吉原　お客さんを見送りに出る方からして　そこらの遊女とは格は違いますね
おっと　申し遅れましたね　私は三井乙春　下町の見世物小屋で座元を勤めているものです
少々用がありまして　「キラロウ」という置屋を探しているのですが
え　ここか　なるほど　これは立派な　では君も　キラロウの
それはよかった　君はキラロウの方だというなら　この手紙に心当たりがありますか
その様子　やっぱりここで黒吉原ゲームになるものが催されているというのは　本当のことなのですね
では　今回開かれるそのゲームの賞品が　人魚の血を引くと噂される娘さんだということも
そうですか　どうやらこの招待状に書かれたことは　全て本当のことだったようですね
早速なんですが　中へ通していただいてもよろしいでしょうか
番頭さんにお会いして　いくつか尋ねたいことがあるので　ありがとうございます

ああ　ここが店　さすがは黒吉原　一般的な店とはずいぶん勝手が違うようですね
失礼します　私は三井乙春と言って　今回ゲームに
あ！　君は　先ほどの娘さんじゃないですか　ではもしかして君が　人魚の血を引くと噂の
ああ　何てことでしょう　そうとは知らず　でもそれなら　君の人並み外れた美しさにも納得が行きますね
そうでしたか　君が　それにしても　どうして目隠しなど　これでは君の美し顔がよく見えないというのに
そうですか　この黒吉原には独特な決まりごとが　ずいぶんたくさんあるようです
番頭さんの話によれば　ここはゲームのコマである　君の品定めをする場だのこと
無闇に手を出すことは禁止されているそうですが
そんなふうに視界を奪われた君が相手では　何か良からぬことを企む輩もいるのでしょうね
そんなに怯えないでください　少なくとも私には　君に何かをしようなんて気はないですよ
手紙を受け取ったものの　実際にここに来るまで　何もかも嘘なのではないかと疑っていたんです
何しろ私は　借金まみれの見世物小屋の座元　私を参加者に選んだところで　このキラロウの利益になるとも思えない
利点がないのは　私にとっても同じです
もしかすると　ゲームに勝てば　借金を返せるくらいの儲けが出るのかと思い　詳しい話を聞きに来たのですが
番頭さんの話によれば　とてもそんなことできそうにもないと　分かりました
万が一ゲームに勝利できたとしても　花魁の君を身受けするには　高くの身受け金を納めなければならないようです
そんなもの　私にはとうてい払えません
あるいは君が　本物の人魚で　その涙に不老不死の力が宿っているのだと　証明できれば
あとで売り飛ばして　儲けを得ることもできるかもしれません
でも　噂の真偽は今のところ　ゲームの元締めである　楼主にすら分からないとのこと
それならば　私に君を手に入れる利点はありません　そんな博打を売ってみる余裕など　ないのですからね
そういうわけですから　いくら参加者に選ばれたとはいっても　私には君を求める理由がありません
とはいえ　ゲームを辞退することもできないようですから　こうして店にまでやって来たわけですが
だけどこうして　君にお会いできて本当によかった　私は昔から　珍しものや美しいものに目がないんですよ
何しろ　世界中からそういうものは集めて　見世物小屋を営んでいるぐらいですからね
本物の人魚かどうか　定かではないとはいえ　君はこんなに美しいんですから　まるで西洋の美しいお人形さんみたいです
こうして眺めているだけで　十分に心が満たされました
これだけでも　ゲームに巻き込まれた甲斐があったというものです
特に君のその透き通るような白い肌　袖からちらりと覗く　その手を見れば分かります
白粉など使わなくでも　十分のほど　君は元々美しい肌をお持ちのようですね
思わず　触れてみたくなってしまいます
あ　ごめんなさい　痛かったですか　そこまで強く触ったつもりはなかったのですが
おや　それは　お待ちくださいな　今君の手首に何か　痣のようなものが
ふん　なるほどね　こうして見ると　ずいぶん不思議な痣ですね　まるで　誰かに抓られたかのような
ぶつけた？　そうですか　それはいけません　せっかくこんなに美しい肌をお持ちなのですから　傷つけないように　十分気をつけないと
少し失礼しますよ　大丈夫　痛いことはしませんから
この痣が　一日も早く消えますように
ああ　すみません　驚かせてしまいましたか　ほんのお呪いのつもりだったんですけど
ねえ君　近いうちに　まだ会いに来でも構いませんか
いくらゲームの勝敗に興味を失ったとはいえ　せっかくこうして知り合いだのですし　それに　なんだか心配なので
ねえ　そうです　もちろん　その痣のことはね　きれいに消えるといいのですが
あ　訪ねてきたからと言って　別段持て成していただく必要はありませんよ
先ほども言ったように　私はこうして　美しい君を眺めながら　話をしているだけで　十分　満足ですからね
本当ですか　ありがとうございます！　では　今宵はお暇しましょうか
次にお会いするときはぜひ　目隠しなどで隠すことなく　君の美しい顔を　眺められると期待していますよ
それでは　お大事に