歌手:
小西克幸
专辑:
《続・ふしぎ工房症候群 EPISODE 2「もう誰も愛せない」》ある日のこと。
ぼくたちは久しぶりに会って、喫茶店で話をしていた。
切り出したのは、彼女の方だった。
わたしたち、あまり合えないのね、と
ぼくはとっさに自分が責められているように感じてしまった。
確かにぼくも忙しいけど、
きみだって仕事に追われているじゃないか。
違う、そんなことを言っても仕方がない。
もっとお互いに時間を作れるように努力しようって言わなきゃ駄目だ。
そう頭の中で考えた時には、
わたしに会おうとしないのはあなたの方よ、
という彼女の言葉が返ってきた。
そんなことないよ。どうしてそういう言い方するの?
ぼくはいつだってきみに会いたいと思っているのに。
それは本心だった。でも、
心の裏側では、ぼくに会おうとしないのはきみの方だ、
という気持ちが強く働いていた。
それは同然彼女にも伝わった。
わたしのせいだって言いたいの?
彼女の苛立つ声を聞いて、ぼくはついかっとなった。
何だよ。そんなこと言ってないだろ?
もっとぼくのことを理解してくれだっていいんじゃないか?
売り言葉に買い言葉だった。
わたしのことも理解してくれてないじゃない?
彼女はそう言って下を向き、
大粒の涙を零しはじめた。
ぼくは言葉に詰まった。確かにそうだ。
ぼくは彼女のことを理解していない。
でも彼女だってぼくのことを全然理解してくれてない。
考えれば考えるほどに詰まっていく。
ふと、ある言葉が浮かった。
所詮、他人同士じゃないか。
考え始めたら止まらなくなった。
彼女と出会ってからまだ一年足らずだ。
そんな僅かな期間にお互いの何がわかる?
わかったのは、考え方の違いや思考の違い。
相手を思う気持ちより、
自分を優先する気持ちの方が勝っているということだ。
お互いの我がままにたって、
もう目を瞑ることができなくなっているということだ。
理解し合うなんてできっこない。
長年一緒に暮らしてきた家族とは違うんだから。。
家族じゃなければ、ぼくの気持ちなんか分からない。
彼女の顔色が変わった。それもそのはずだ。
だって、これから家族になるはずの彼女に向かって、
きみは家族じゃないから、
と言って退けたのも同然だから。
一瞬後悔したが、ぼくにはもう、
それ以上何も言うことができなかった。
ごめん、の一言がどうしても出てこない。
ぼくたちはずっと座ったまま黙り続けた。
何時間もそうやっていたような気がする。
長く重苦しい時間だけが過ぎていく。
ふいに彼女が席を立ち、
ぼくに背を向けて出口に向かった。
あっ、突然だったから、
ぼくも慌てて後を追おうとした。
その時、来ないで、と彼女は言った。
ぼくは立ったまま彼女の後ろ姿を見つめた。
動けなかった。いや、動こうとしない自分がいた。
心のどこかで、もういいという気持ちが働いた。
所詮ぼくたちは家族になれない。
そんな考えが頭の中を支配し、
ぼくをその場に釘付けにした。