Non-sensory world メリ:「この世には、目には見えない不思議な力があるのです......」 蓮子:「また古いオカルト?ムービー見たの?」 メリ:「残念、オカルト?コミックよ。 でも蓮子、目に見えない力は確かにあるのよ。 なんだかわかる?」 蓮子:「えっと......サイキック?フォース?毒電波?」 メリ:「当たらずとも遠からずね。 毒はつかないけど、例えば電磁波。 赤外線に紫外線。重力なんかもそうね」 蓮子:「ああ......そういうことね」 メリ:「弱い力、強い力、重力、電磁力。摩擦にコリオリ、原子間力。 私たちの周囲に働いている力は、人間の目には見えないものの方がずっと多いのよ。 それを『不思議』と取るかは、人それぞれだけれど......」 蓮子:「そういった不可視の力を見る瞳があったら、 世界はどう目えるんでしょうね」 メリ:「その人にしかわからないでしょうね。 もしかしたら、それこそ世界を形作っているのが粒なのか波なのかどうかも、 目で見えてしまうのかもしれないわ」 蓮子:「高額な電子顕微鏡要らずだわ、羨ましい」 メリ:「即物的なお返事ありがとう。 でも、やっぱり私は思うのよ」 蓮子:「何を?」 メリ:「世界の全てを、たったひとつの答えで語り尽くせると蓮子は言うけれど...... そこには不思議や、隠された秘密なんて、何もないんじゃないかしら」 蓮子:「何も、ない......」 メリ:「ええ。降り来る雪を貴方は綺麗だと言うけれど、 その誰かの瞳には空気中のチリを中心に、 氷が寄り集まったものにしか見えないのかもしれない。 夕焼けを美しいと言う傍で、 まったく違うおぞましい色を見ているのかもしれない。 世界の在り方を全て理解してしまうというのは、 不思議なことや、秘密や、心や夢すらも、 何もかも理屈で分解してしまって...... 物理が全てを解き明かしたそこには、 何も残っていないのかもしれないわ」 蓮子:「それを貴方は、哀しいことだと思う?」 メリ:「わからないわ......」 蓮子:「でも、それは違うわメリー」 メリ:「え?」 蓮子:「目に見えるものでも、見えないものでもない。 どこにもないものが、それでもどこかにあるのだと、 私たちは信じているのよ」