三丁目の猫たち 【夜】陽~×3 いる? 【阳】寝てたのか? えっと、夜と郁か? 【郁】ああ、いたいた こっちに陽を発見です、夜さん 【夜】うん、やっぱりこの辺で昼寝をしてたね 【阳】やっぱりで悪かったな この天気じゃ昼寝をするなっていう方が 【郁】まだ眠そうだ 【阳】猫は寝るのが仕事みたいなもんだからな で?どうした 二人揃って俺に何か用か? 【夜】あっそうだ、そうだった 陽、淚を見なかったかな 【阳】淚?あ~あれか? 最近海が拾った、チビっこいひ弱そうな、 元家猫か? 【郁】そうその子、あそこに建てるタワーマンションに住んでた、 音楽家に飼われていた子猫 引っ越しする時に、置いていかれて 【夜】ずっと元気がなかったあの子だよ 先まで一緒に遊んでいたんだけど、 突然ピアノの音が聞こえるって言って、 走り出しちゃって 【郁】見失っちゃったん 【阳】迷子か? 【郁】そうとも言う 淚は街に慣れてないから、心配で 【夜】せっかく一緒に遊べるくらいに元気になったと思ったのに 今度は交通事故で怪我とかしちゃったらって思うと、 どうしよう 【阳】どうしようって言われてもな 元気がなかったのは当然だろ、 居心地のいい場所からいきなり放り出されたら、 誰だってそうなる それに、野良の俺らには分からない話だが、 普通家猫ってのは、 飼い主とそれなりの絆があるもんなんだろ 【郁】うん、そうだと思う 俺だって飼い主さんが好きだからね~ 暖かい寝床とご飯をくれて 優しい手で撫ででくれる 【夜】それが一方的に断ち切られちゃったら、 悲しくて辛いだろね 【阳】え?お前 そこは悲しむより先に、 全力で呪うところだろ 【郁】呪っ!陽怖い 【夜】うん、怖い 【阳】バーカお前ら分かってねーな 猫相手に酷い事をする奴ってのは、 他の生き物にだって同じ様な事をしてる奴だよ 許せるか、教育だ教育 【夜】なるほどって納得しかけだよ 【郁】ちなみに、陽が呪うとどんな事が起こるの? 【阳】大した事ないぞ、夜な夜などこからともなく 般若心経が聞こえて、 満足に眠れなくなるくらいだ 【夜&郁】怖っ! 【夜】正しくホラーだよ 【郁】すごく大した事あるよ 【阳】えーそうか? まだ上の口、入門編だぞ 兄貴達が呪うと、 昼間でも耳から離れなくなるからな 【夜】葉月兄弟を怒らせない様にしよう って話が逸れてきた、 本当にありそうな怖い話より、 今は淚!淚のことだよ 【郁】そうそう、そういう訳で淚を探してるんだ 見かけてないかな陽 【阳】えー俺は見てないけど~ あっあの辺にいるんじゃねー 水族館がある、あの高いビルの下の、 階段になってるどころ 【郁】もう見たけどいなかった 【阳】あーそんじゃ、道路渡って向かいの、 アニメイトって看板があるビルの周り 女の子が多いから、俺的ベストの散歩道 【夜】陽のベストは聞いてない というか、本当に女の人が好きだね 男の人には触らせもしないくせに 【阳】当然だろ、俺様に触っていいのは女子限定だ 美味しい餌付きなら、 肉球一回までは許す 【夜】ハードルが高いのか低いのか分からなくなって来た 【郁】淚はずっと海さんに着いて回っていたから、 この辺を一人で歩き回れるほど、 地理を知らないはずなんだよね 交通事故も怖いけど、 うっかり他の猫の縄張りに回り込んでないといいなって 【夜】小さい子をいじめる、タチが悪いのもいるからね 【阳】保護者は?海はどうしたんだよ 【夜】朝から隼さんのお目付け役として、 一丁目に出掛けてる、 だから俺だちが淚の面倒を頼まれたんだよ なのに見失っちゃって 【阳】一丁目、ああ~ また隼が始さんのどこに押し掛けてんのか? 【郁】趣味だって 【阳】すげーどうでもいい情報をありがとう ああ~しょうがねーな とりあえずその辺を、ぐるっと見て回るか