出所の日 三年が瞬く間に過ぎ、出所を迎えた日のこと。 刑務所を背にして、最初に僕が見たのは、小さな女の子の姿だった。 「あっ、お前は。。。」とっさに僕は息を呑んだ。 あの事件の直前にバーのカウンターで見た夢を思い出した。 そんな馬鹿な。。。あれは夢じゃなかったのか。。 僕はまじまじと少女の顔を見た。 間違いない、あの夢に出てきた女の子だ。 いや、たとえ夢じゃなかったにせよ、なぜあの子はここに? 頭が混乱して、どう対処していいのかわからなかった。 その時、「さあ、お兄さんのところに行きましょう」と少女が言った。 僕ははっとなった。 そこではじめて、兄の姿が見当たらないことに気付いた。 僕はついかっとなって叫んだ。 「冗談じゃない!あいつも俺を見放したんだ。 なのになんで俺があんな奴のところに行かなきゃならない。顔も見たくないのに。」 すると少女は飽きれた顔をしながら、「お兄さんは来たくても来れないの」と言った。 「なんだそりゃ?どういう意味だ?みんなして俺をバカにしてるのか!」 頭にきて力いっぱい叫んだら、急に周りが暗くなった。 貧血でも起こしたのかと考えている間に、ふと気が遠のいた。