十二国记 十二国記 漆黒の闇、だった。 彼女はその中に立ちすくんでいる。 どこからか高く澄ますんだ音色で、滴が水面を叩く音がしていた。細い音は闇にこだまして、まるで真っ暗な洞窟の中にでもいるようだが、そうでないことを彼女は知っていた。 闇は深く、広い。其の天もなく地もない闇の中に、薄く紅蓮のあかりがともった。闇の中に炎でも燃えさかっているように、紅蓮の光は形を変え、踊る。 紅い光を背にして無数の影が見えた。 異形の獣の群れだった。